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2025年12月26日
100億宣言はゴールの表明ではなく
「覚悟と行動のスタートライン」
河野組 代表取締役 河野将弥 氏

愛知県津島市に本社を置く株式会社河野組は、プラントや建屋の解体工事、大規模修繕工事などを手がける総合解体企業です。2003年の創業以来、特殊プラント解体に高い実績をもち、大型案件を数多く手がけてきました。

2018年に社長に就任した河野将弥氏は、創業者である兄(会長)とともに語り続けてきた「100億企業」を形にしようと決意。2031年の100億達成をめざし、「従業員と家族、そして子どもたち、孫までみんなが安心して暮らせる会社」の実現に向けて、着実に歩みを進めています。

兄とともに語り続けた「100億の夢」

「実は私が社長になってから考えたものではありません」

河野氏は「100億宣言」の経緯をこう切り出しました。創業者である兄とともに、まだ社員数名、売上高も小さい頃から、「100億を達成するのはどうしたらいいか」と常に語り続けてきたといいます。

建設業で 10 代の頃から経験を積み、2018 年に兄の呼びかけで河野組に参画。8 か月後の社長就任当時、売上高は 11 億ほどでした。

「兄が掲げてきた『100 億企業をつくる』という想いを、次の経営者として受け継ぎ、 実現したいと考えていました」と河野氏は語ります。

長年の夢を公にするきっかけとなったのは、取引先から100億宣言の話を聞いたことでした。ちょうど若い社員が増えて技術力が安定し、大型案件の問い合わせが続々と届き始めた時期でもあり、兄と語り続けた「100億企業をつくる」という未来が実現可能になると確信したタイミングでした。

河野氏にとって、100億宣言は社員と業界の未来への意思表示です。

「やればできる会社であること、大きな目標を掲げても逃げない会社であること、かならず実現までやりきる会社であること、この姿勢を言葉ではなく行動で見せたかったのです」

この変化は社内にも大きな影響を与えました。若手社員からは「もっと大きな案件はないですか」という前向きな声が上がるようになりました。さらに、古株の管理職たちも100億宣言、そして中小企業成長加速化補助金採択後に、「社長は本気だ」「俺たちやればできるんだ」という自信や誇りを深め、社員の中でスイッチが入ったようです。

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河野組を支える職人集団「一式受注を可能にする技術力」

「当社の特徴は、多能工(ひとりで複数の業務をこなせる)の職人が多い点にあります。重機のオペレーターは重機操作のみを行うのが一般的な解体業者ですが、当社では重機のオペレーターが足場も組むのです」

たとえば建物を解体する場合、河野組の重機オペレーターは自社で足場を組み、重機に乗って作業し、足場の解体から産業廃棄物の分別作業といった複数の作業を、ひとりで行います。この体制により、少人数での完結を可能とし、工期短縮と外注費の発生抑制を実現しています。さらに、100メートル級の高層・大型構造物の解体実績と確かな技術力が、地域を超えて選ばれる理由です

大手鉄鋼メーカーの高炉解体では、その技術力が存分に発揮されました。通常、この規模の構造物では、ガスで鉄を切る専門の職人と重機オペレーターが分業で動くのが一般的です。しかし河野組では、ガス切断をした職人がそのまま重機に乗り、解体工程まで一貫して担います。この分業が一般的な解体業で、職人が一人で複数工程を担える技術力こそが、河野組の大きな強みなのです。

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もうひとつの特徴が、「現場ファースト」の経営姿勢。基本的に営業部門を置いておらず、社員の大半が現場で働いており、これまで築いた技術力、社員の成長、協力会社の支え、お客さまからの信頼による現場営業が基本です。「なにしろ会長である兄自らが現場に出ていますから。正直、なかなかないと思いますね」

会長、社長、専務が必ず現場を回る、そして職人の状況を社長自身の目で見て鼓舞する、徹底的な現場主義。その確かな実績が次の仕事を呼び続けています。 「現場で安全・品質・工程を徹底すれば、自然と声がかかる。それこそが最良の営業です」

仕事が次の仕事を呼ぶ。こうした積み重ねが、愛知周辺のみならず関東、そして日本全国へと着実な広がりを見せています。

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人への投資——現場ファーストの待遇改善

「100億達成には、社員数を現在の52名から120名前後まで伸ばしていく必要があります」 河野氏は一人当たりの売上を年間8,000万円とすることを目標に、効率性を維持しながら人材増強を推し進めています。

採用は基本的に地元が中心。面接時には「うちはオペレーターだけの仕事じゃない」と、多能工としてさまざまな役目を担ってもらう覚悟を伝えています。

もちろん、待遇面での改善も徹底しています。 「建設業界の他社よりも、もっと高い水準にする。大事なのは『現場ファースト』です。現場の施工担当者は給料が安くて、管理部門の担当者は高いという構造がよく見られますが、うちは違います」

河野氏自身、10代の頃に日給8,000円、交通費なしと、いった環境を目の当たりにしながら働いた経験があります。だからこそ、全社員に月給制を導入し、年2回の賞与を支給しています。職人も水準より高い給与設定を行い、役職者には社用車を支給して現場に行ってもらいます。

河野氏の経営姿勢を象徴するのが、予算管理に対する考え方です。任された現場の中で、予算を組んで、実働がどうだったのか、そして会社にいくら残っているのかという数字の根拠を徹底して明らかにしています。

そのため、現場責任者には必ずパソコンで台帳をつけさせ、労務費、消耗品、協力会社への支払い、外注費、出張交通費、すべてを細かく管理。これは単なる経費削減が目的ではなく、「現場だけやっていればいいという考えから脱却し、誰もが経営を意識できる人材になってほしい」という社長の強い思いからです。

さらに、一層の成長に向けた積極的な設備投資も行っています。2024年、2025年とそれぞれ4億円ほどの設備投資を実施。この投資は、具体的な大型案件の受注予測と追加工事の数値が既に出ているため、工面してでも自己資金や金融機関からの借入などから成長に向けた投資を断行するという経営判断です。

その上で、2025年には、かなりの高倍率だった売上高100億超を目指す企業に向けた「中小企業成長加速化補助金」の採択企業にも選定されました。これは「第三者が当社の成長性と社員の努力を認めてくれた証」として、社員の自信と誇りにつながっているといいます。さらに、賃上げや採用も同時に進めていることにより、社員の安心感やモチベーションも確実に高まっているようです。

金融機関との関係も極めて良好です。金融機関の支店長に採択を報告した際、「私の見立ては間違っていなかったです。私も大変誇らしく思います」と言われたそうです。金融機関にも年間予定や売上高予測を積極的に開示し、借入の7~8割が設備投資という体制を維持しています。この高い透明性と明確な成長の根拠が、金融機関からの厚い信頼と、将来のさらなる挑戦を支える土台となっています。

協力会社からも100億宣言だけを聞いた段階では、「本気なのか?」という様子見の雰囲気もあったと思います。しかし、100億宣言、そして中小企業成長加速化補助金採択によって、成長に向けた投資が動き始めたことで、「本気で100億を目指している会社だ」「河野組と一緒に伸びていきたい」といった形で、明らかに見方が変わってきています。

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子どもに誇れる会社を作る
──100億宣言を超えた「未来への約束」

インタビューの終盤、河野氏は自身の原点について語り始めました。 「私は母子家庭で育ち、決して豊かとはいえない環境で育ちました」

だからこそ、「社長だけが儲かればいい」「役員だけが良ければいい」ではなく、 「今いる従業員、その奥さん、彼女、家族、お子さん、その孫まで、みんなが安心して暮らせる会社を作りたい。その思いはずっと変わらずあります」

河野氏の言葉には、強い思いが込められています。この思いが経営理念の土台となっています。

「子どもたちが『お父さんの会社、お母さんの会社で、僕も将来働きたい』って言ってくれたらいいと思いませんか。だから常に考えています。若い世代の子たちの未来をどうすれば作れるのか、と」

その想いの延長線上にあるのが河野氏にとっての100億宣言です。

河野氏自身には娘も息子もいます。息子は今、会社で従業員として働いています。「私自身は、経営者として優れているかと言われたら、全然優れてなくて。まだまだ勉強中です。みんなにどうしてあげたら良いのか、どうすれば働きやすいのか、ただそれを考えているだけです」

そして、100億宣言の意義についてこう続けました。 「宣言するというのは、公に約束するということです。だから、もう本当に逃げちゃダメですし、やらないといけない。よく『準備が整っていないから』とか『まだまだ未熟だから』とか言うじゃないですか。でも、準備できたら本当にできるのかと言ったら、また違いますよね。宣言はスタートラインだと思っています」

河野氏の目には、確かな未来が見えています。創業15期目、これまで一度も売上を下げたことがないという実績が、その自信を裏付けています。

さらに河野氏は、建設業の「きつい・危険・汚い」という3Kのイメージを、「カッコいい・稼げる・けっこうモテる」という新たな3Kに作り変えようとしています。100億宣言は単なる売上目標ではなく、「社員の未来」「業界の未来」を見据えた意思表示であり、「人を幸せにするための挑戦」なのです。

宣言して終わりではなく、「宣言してからが本当の勝負」であり、「これからも社員と一緒に行動で100億企業を証明していきたい」「大きな目標を掲げることに、遠慮はいらない」と、河野氏は熱く語ってくださいました。

準備が整うのを待つのではなく、まず宣言し、そして行動する——パワフルで元気な、成長真っ只中にいる河野組の100億への挑戦は、中小企業にとって大きな勇気と示唆を与えてくれるものとなるでしょう。

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